■『胃がん 手術後の生活読本』(著・佐野武、主婦と生活社)の再読のつづき。

 もうひとつ、いまさらだけど、抗がん剤による副作用が起こることは知っていたし、正常な細胞まで影響を受けることも知っていた。
 その副作用が脱毛や下痢や吐き気を引き起こすことも知っていた。
 が、「細胞分裂が盛ん」な細胞に強く作用することは知らなかった。
 胃腸などの粘膜や造血組織(骨髄)、毛根などの細胞は、ほかの細胞よりも細胞分裂が活発なため、どうしても抗がん剤の作用を受けてしまう。
 副作用はそこの正常な細胞分裂に影響が出る。
 つまり、抗がん剤は、細胞分裂の活発ながん細胞の増殖速度を遅くすることができるようにする。薬で、がん細胞を殺すわけではなく、細胞分裂を鈍化させる。そして、本来、増殖速度が速かったがん化していない細胞も遅速化させるために、いままでのように毛が生えてこない、消化されない、爪が薄いなどが起きるわけだ。
 忘れてはならないことだが、治療が終われば、また細胞分裂が活発になり、毛も爪も速度を早めて生えてくる。
 しかし、同時に、死滅させたわけではないがん細胞も、またもとの速度で分裂をはじめる。
 転移をしていれば、転移先での活動がはじまる。
 そして、いかに「がん細胞」を食べたり、破壊する免疫細胞がお利口さんであるか、改めて感心する。